たき火をかこんだがらがらどん

たき火をかこんだがらがらどん 小学館文庫
椎名 誠

Takibiwokakonda ばか旅作家を自称し、さまざまなやんちゃを楽しむ椎名誠さん。でも、ある種、人生の次のステップに入ったことを思わせる一冊。

この本はエッセイ集だけど、特定の週刊誌なんかの連載をまとめたシリーズ物ではなくて、これまで書いたままで放置して本に収録していなかったエッセイの中から、著者が見直して「予選を突破して最終選考に残った」ものをまとめた一冊です。それだけに、長さやテーマもバラエティに富んでるけど、なかなか読んでて楽しいものばかり。

でも、そもそも過去に書き散らしたエッセイを見直したりするあたり、やっぱり人生の次のステップ感が漂う気がする。

tomoがとりわけグッときたのは、前文の書き出し部分。

『二人の子供が小さかったとき、武蔵野に住んでいた。ぼくも妻も三十歳とすこしのしんまいの親で(中略)、慣れない男親のぼくが小さな女の子と意識を通じ合える手っ取り早い方法に絵本を読んであげる、というのがあるということを発見した。下の男の子が絵本がわかってくるようになると二人いっぺんに相手ができる。
 いろんな絵本を読んだが三歳違いの姉弟が共通して喜ぶのが北欧民話を題材にしたマーシャ・ブラウンの「三匹のやぎのがらがらどん」であった』

これは、「三匹のやぎのがらがらどん」からこのエッセイ集のタイトルをもらったっていうことの説明だね。

椎名誠ファンならご承知の通り、サラリーマンをやめて作家(=自由業)になった椎名誠は、外で働く妻に代わって子育てのプライマリーな担い手としてがんばってた時代があるんだよね。その集大成は「岳物語」を読んでほしい。

もうちょっと引用を続けます。

『当時は家のすぐ近くに武蔵野の雑木林や空き地があってそこで安全に自由に遊ばせることができた。秋の枯葉が多いときは焚き火を作って二人の子供に枯れ葉集めの手伝いをさせたりした。
 いま思えば夢のようないい時代だった。
 二人の子供に同時に本を読んであげて、二人の子供と一緒に焚き火ができたのは、その時代のその時だけであったのだ。
 いま、二人の子供は大人になって、それぞれニューヨークとサンフランシスコで自分の生活をしている。武蔵野の家はもうないし、空き地だってない。もしかするとあの雑木林もなくなってしまったかもしれない。
 焚き火をしているその瞬間は、まさかこれが親子で焚き火をする最後のものだとは思わなかったが、人生の出来事なんておおかたそんなことが多いのだな、と漸くいまこの年齢になって気がついてきたのだ。』

tomoの周囲には、今まさに子育て真っ最中の人もいれば、すでに子離れの時代の人もいるけど、そのどちらにもなんだかしっくり心にしみる前文じゃないかと思うけど、どうでしょうか♪

| | コメント (0) | トラックバック (0)

窓際OL 人事考課でガケっぷち

窓際OL 人事考課でガケっぷち 新潮文庫
斉藤 由香

Madogiiwaol_jinji 迫り来る不況とリストラは、窓際OL斉藤由香にも、ひたひたと忍び寄ってきていた(笑)!

サントリー宣伝部で、強壮食品「マカ」の宣伝に励んでいた斉藤由香さんだけど、気がつけば同期のみんなは着々と出世してる。それどころか、かわいがっていた後輩の女性たちまで管理職になりつつあるんだけど。一方で相変わらず平社員のままで人事考課面接では芳しくない反応が続いてるし・・・

そしてついに、関係会社に出向の辞令が出る。私って、飛ばされたの?

社内の先輩を「キャバクラ課長」と呼んでネタにするなどやりたい放題だけど、この斉藤由香さん、実はかの「どくとるマンボウ」北杜夫さんのお嬢さんなんです。

父親譲りの読みやすい文章、そして家庭での「どくとるマンボウ」の様子なんかも書かれてるし、なかなか楽しい一冊だよ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

もうおうちへかえりましょう

もうおうちへかえりましょう 小学館文庫
穂村弘

Mououchi 穂村弘さんは、時たま新聞のコラムで見かけて不思議な面白さのある文章が気になってた存在だけど、今まで本を購入して呼んだことは無かったと思う。

筆者はバブル時代に青春を送った歌人で、本書はそんな筆者がいくつかの雑誌などに発表したエッセイを集めたもの。

なんだか独特の、ちょっとシニカルで自虐的な笑いのセンスが、不思議と私の笑いの波長と合うものが多い。

たとえば・・・

ラブホテルに女の子と入る、女の子がシャワーから出てきて筆者を見て、「ああびっくりした、そこにいたのか」と言う。このせりふは女の子の照れなんかもあって文字通りの意味じゃないと思うんだけど、筆者は「別に冷蔵庫の陰とかベッドの下とかに潜んでいたわけではない。普通に椅子に座っていたのである。私はそれほど影が薄いのだ。」と続ける。私の笑いの波長はここで「くすっ」とくる。

ベッドと壁の間に落とした靴下を、すぐに拾えるのに億劫で拾わないでいて、やがて何十年後かに自分が孤独死したあとでその靴下がだれかに発見されるところを想像する。また「くすっ」。

短歌っていうのは「サラダ記念日」か古典しか知らなかったけど、文中に引用されてる歌をみると、現代短歌もなかなか面白いかな、なんて思ったりもする。

なんとなく読んだ割には、当たりの本でした。もうちょっと同じ筆者の他の本も読み進めてみようかなって気分になってます♪

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ほんまにオレはアホやろか

ほんまにオレはアホやろか 新潮文庫
水木しげる

Honmaniorehaahoyaroka テレビの朝ドラで話題になってるせいか、本屋さんでは水木しげるさん関係の本がたくさん並んでます。

これはご本人の自伝、まあ聞き書きかもしれないけど、さすがにBIGな人を取り扱ってるだけあって、なかなか面白いです。

あらゆる入試に落ち続ける日々、なんと全受験成中1人しか落ちない試験にも落ちてしまう。

ご両親の心配やご苦労を思うとわらごとじゃないのかもしれないけど、ここまで徹底してるとなんかすごいな~って畏敬の念を覚えます。

紙芝居、貸本と、業界の盛衰を身をもって体験して、最後は大当たりするわけだけど、貧しくっても成功しても、この人なら自分を変えないんだろうなって思いました。

尊敬!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

地球のはぐれ方―東京するめクラブ

地球のはぐれ方―東京するめクラブ 文春文庫
村上 春樹、吉本 由美、都築 響一

51f1barhrll_ss500_ 6/22読了♪

村上 春樹、吉本 由美、都築 響一の3人で結成した「東京スルメクラブ」、その名前からしてすでにかなりいい加減な感じを狙ってるのが分かる。

その3人が村上春樹隊長を中心として、個人的興味に導かれるままにちょっとゆるい目の付け所にこだわって決めた土地について、現地に乗り込んでフィールドワークを行い、いくつかテーマを決めて分担して執筆するっていう、まあ一種の旅ルポ。

行く先の選択もちょっと不思議なセンを狙っていて、「名古屋」「熱海」「ハワイ」「サハリン」「清里」・・・三人三様の目の付け所にこだわったり、時には投げやりになったり、時にはちょっぴり真面目に改善提言を考えたりする。

どれもそれぞれ面白いけど、やっぱり食のフィールドワークやウェディングの取材までやってる名古屋が最高かな。大笑いするっていうより、ニヤリと笑える楽しい本。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ツチヤの口車

ツチヤの口車 (文春文庫)
土屋堅二
417j6c2unel_ss500_ 2/24読了♪

ご存知御茶ノ水女子大学で哲学の教鞭をとる土屋教授の爆笑エッセイ。

土屋教授が文学部学部長時代の話が中心なんだけど、あいかわらずところどころツボにはまって笑える。誇張されているんだろうとは思いつつ、助手や奥様とは一体どんな人なのか気になるし、他の学部の学部長らしきH教授(お茶大OBらしい)というのも気になる。まさかほんとにドアのノブを力任せに何本も引き抜いたりはしていないと思うんだけど・・・

こういうノリの話が好きな人にはたまらない、そして趣味にあわない人には訳がわかんない世界なんだろうな~って思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

パンの耳のまるかじり

パンの耳のまるかじり (文春文庫)
東海林さだお
41yezicl3l_ss500_ 2/18読了♪

週間朝日の連載エッセイ「あれも食いたいこれも食いたい」をまとめたまるかじりシリーズ、相当な長期連載、これで一体何冊目になったのかな。

題材を食べ物に限って毎回色々なテーマを選び、週刊誌見開き2ページのボリュームでいつもコンスタントにヒットをとばすこのシリーズ。今回の表題になっているのはパンの耳について。あなたはどう思うか?って問いかける。
①不愉快である
②支持する
③やむをえない

ねっ、なんか面白そうでしょ?

築地場内にはパンの耳をどうするかわがままを聞いてくれる喫茶店があって、耳あり、一つ落とし、二つ落とし、三つ落とし、耳なしって選べるんだって。耳にこだわる人って、実は結構多いのかな。

他にも、苺大福についての考察とかゴーヤの丸かじり実験(ホントにゴーヤをまるごと齧ってみる)とか、思わずクスって笑える話がいっぱいだよ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

誰だってズルしたい

誰だってズルしたい (文春文庫)
東海林さだお
41schyahhl_ss500_12/20読了♪

おなじみ、オール読物の連載エッセイ「男の分別学」をまとめた本。

書名になってる「ズル」については数回にわたって連載になってる。行列に割り込むとか、カレーライスのラッキョを大量に確保する「ズル」、出身地の人口をついつい多めに言ってしまう「ズル」、女性が年齢や体重を少なめに申告する「ズル」・・・

どうでも良いコトを様々な角度から分類したり指摘したりする、その遊びの精神がなかなか楽しい。
tomoだってズルしたいもんね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

舌の記憶

舌の記憶 新潮文庫
筒井ともみ

41ulnhp3ujl_ss500_ 10/9読了♪

脚本家・エッセイスト・小説家の筒井ともみさんが、幼い頃の食べ物の記憶を頼りに当時を回想するエッセイ集。

幼い頃の食べ物の記憶って言っても、筒井さんの家は普通の家庭とはちょっと違う。母は夫と離別して、叔父・伯母と同居しているんだけど、この伯母(母の姉)は女優、その夫は酒びたりで歯弱の俳優。そして筒井ともみ自身は食が細くてしょっちゅう微熱を出して寝込んでいるような子供だった。

そして彼女はおっとりした性格の母にかわって、幼い頃から献立を考える手伝いをしたり、朝の味噌汁づくりを担当していた。そんな、子供にしてはかなりクールな視線で見上げる大人の世界が垣間見えるお話が満載。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

わが家の夕めし

わが家の夕めし 講談社文庫
池波正太郎

51jaw0kja8l_ss500_ 7/20読了♪

昭和44年以降の6年間に単発で書かれたエッセイを集めたもの。書名の「わが家の夕めし」はそのうち一編の題で、全体を通じて食べ物や夕ごはんの話を集めているわけじゃないよ。

この時期池波正太郎さんは脚本の仕事がもっともアブラが乗ってた時期で、脚本以外のエッセイはあんまり書いていないらしい。その時期の作品の言わば寄せ集め、雑誌に書いたものもあれば広告の原稿や演劇のプログラムに寄せた言葉まで入ってる。池波ファンには楽しい一冊だけど、全体としての一貫性とかテーマってのはあんまり感じられないような気もします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)